産経新聞 2023/8/7 20:07

【ソウル=桜井紀雄】世界各地からボーイスカウトやガールスカウトが集まり韓国で開催中のキャンプの祭典で、
猛暑などへの備えのずさんさから熱中症の症状を訴える参加者が続出、英国や米国のチームが大挙撤収する事態となった。
「国際的な恥だ」との批判に韓国政府が収拾に乗り出したものの、台風の接近もあってキャンプ地からの全面撤収を余儀なくされた。

「世界スカウトジャンボリー」と呼ばれる4年に1度の国際大会で、今年は韓国南西部、全羅北道(チョルラブクト)セマングムで
1〜12日の日程で開催。日本を含む150カ国以上から約4万3千人が参加した。
だが、テントの設営地に選ばれたのは広大な干拓地で日よけとなる樹木はほとんどない。
直前に降った大雨で至る所に水たまりができ、連日35度前後の最高気温を記録する中、会場は蒸し風呂状態となった。

熱中症の症状を訴える人は最初の3日間で500人を超えた。害虫も大量発生し、虫刺されで炎症を起こす患者も相次いだ。
トイレが不衛生▽シートで仕切ったシャワー施設は外から丸見え▽支給された食材にカビが生えていた
−といった運営上の不備が連日伝えられ、世界スカウト機構は4日、日程の短縮を勧告。
約4400人と最多人数を派遣した英国は5日以降、ソウル首都圏のホテルに撤収した。
約1500人が参加する米国も宿泊地を米軍基地に移し、シンガポールもキャンプ地から撤収した。

小学生時代にスカウトを経験した韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は2日、参加者を前に
「スカウトの経験は人生の大きな力になった」とあいさつするほど思い入れがある。噴出する批判に夏季休暇中にもかかわらず、
冷房が効いたバスや冷水を供給する車両を「無制限に支援するよう」命じるなど政府の介入を指示していった。

政府は巨額の予備費や大量の人員を投入。韓国軍が大掛かりな日よけの設置に動くなど、さながら大災害への対応の様相を呈した。
サムスングループなどの大企業もエアコン付き簡易トイレや大量のミネラルウオーターを提供する支援に動いた。
トイレやシャワー施設の清掃に約1400人が動員され、参加者の不満は解消されつつあった。

ただ、台風6号が10日にも韓国に上陸する恐れがあり、主催者側は7日、キャンプ地からの早期撤収を決定。
全ての参加者は8日からソウル首都圏などの屋内施設に順次移る予定だ。

大会の誘致が文在寅(ムン・ジェイン)前政権時代に決まったことから、与野党が責任をなすりつけ合う事態も生じた。

尹氏の指示で、代わりに参加者が韓国文化などを体験できる観光プログラムも急遽(きゅうきょ)、
多数用意されたものの、仲間と力を合わせて野外活動に取り組むという大会本来の趣旨は損なわれたとの指摘も出ている。

https://www.sankei.com/article/20230807-MQOERR3GUVLRVPIBEYHDER4SWA/