仏国際放送局ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)中国語版は1日、東京電力福島第一原発の処理水海洋放出をめぐって対立する日本と中国の現状について、中国系米国人の政治評論家である陳破空(チェン・ポーコン)氏へのインタビュー記事を掲載した。

中国政府が処理水海洋放出を厳しく非難していることについて、陳氏は「中国政府は処理水放出は海洋汚染であり、人体に影響を及ぼすもので、日本側を自分勝手で無責任と非難しているが、これには二つの問題がある」と指摘。「まず一つ目は、中国自身が沿海に多くの原発を有し海に頻繁に排水しているが、これは国際原子力機関(IAEA)の検査も受けておらず、含まれる放射性物質の量も非常に多いということ。日本もこの点を指摘しているが、中国の排水のトリチウム含有量は日本の8〜10倍だ」とした。

そして、「もう一つの問題は、中国政府が密かに中国の原子力関連の資料を撤去したこと。『2019〜2022年鑑』など、中国の沿海の原発、たとえば秦山原発、南陽原発、大亜湾原発のトリチウムを含む排水の状况に関する書籍はいずれも撤去された。国内の一部の専門家や学者もこの点を指摘しているが、ある専門家はネット上に残った資料を見つけ出しており、その内容は、中国が海に排出し続けている水は日本のそれよりもずっと深刻だということを証明するものだった」と述べた。

陳氏は「これに加えて、中国政府は中国人民に対し、日本の処理水は希釈処理を繰り返しトリチウム量を低減させただけでなく、IAEAによる基準を満たすとの同意を得た上で排出を開始したということをきちんと説明していない」と指摘した上で、「2011年の311(東日本大震災)では2万人以上の命が奪われ、国際社会は深い同情を示した。中国政府のこのタイミングでの抗議は日本の傷口に塩を塗るような行為であり、国際社会は理解しがたく、控えめに行っても困惑している」と論じた。

中国政府が日本産の水産品輸入を全面的に禁止したことについて「むしろ中国自身が損するのではないか」との質問には「その通り」と応じ、「海には流れがあり、世界はつながっている。処理水によって汚染されるのであれば真っ先に被害があるのは日本人だが、日本では一部に反対の声はあっても大多数の人は落ち着いているし、普段と変わらない生活を送っている。いかなるパニックも起きていない。しかし、中国の方はと言えば、政府が大々的に宣伝した結果、人民が塩を買い占めるといったパニック現象が起きている」と指摘。「中国政府が水産物の輸入を禁止したため自国産の水産物へも懸念の声が広がり、結果的に中国の漁業が打撃を受けている」とした。

また、中国で反日感情が高まり、多くの中国人が日本の店や施設に迷惑電話をかけていることについては、「中国の国際的なイメージを大きく損なうものだ。彼らは扇動され自発的にこのような行為に出ている可能性もあるが、五毛党(ネット上で世論を誘導する共産党配下の集団)によるものかもしれない」と指摘。一方で、「中国当局は日本との徹底対立は恐れており、日本人学校に石や卵が投げつけられたりもしているが今回は比較的少ない。日本の機関や企業が大量に撤退することは中国経済に大きな痛手になるからだ」との考えを示した。

中国国内で日本旅行のキャンセルが相次いでいることについては「実は自ら行きたくなくなったり、反日ブームに乗っかったりしているのではなく、ほとんどが国内で『売国奴』『親日』などとののしられるリスクを考えてのこと。中国で日本に旅行に行けるのは中流階級からエリート層。しかし、街で暴れているのは下層の人々。日本批判と自分たちへの嫉妬が相まって攻撃されることを恐れてキャンセルしている」と説明。「日本旅行のキャンセルは日本経済にとっても損失だが、中国の旅行会社や旅行を予定していた本人にとっても少なくない損失になるのだ」と述べた。

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しかし中国の民衆はプロパガンダの元で何も知らず、中国の友人は世界中にいると思い込んでいる」とした。

陳氏は、中国政府の反発の背景には政治的意図があるとし、「日本が米韓と同盟を強化したこと、米豪印と共に中国包囲網を形成していること、台湾問題に介入していることなどで不満があり、日本に言いがかりをつけたのだ。同時に、国内の矛盾から目をそらしたいという思惑もある。河北省の洪水対策、そして中国経済がますます悪化していることで、人々の不満が噴出しており、それら総合的な考えのもとに、反日ブームを作り出したのだ」と推察。一方で、「この反日ブームは長くは続かない。中国経済の悪化が続いているため、一定の目的(人々の視線を外に向ける)を達した後は下火になるだろう」との見方を示した。(翻訳・編集/北田)

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