■「バスに乗り遅れるな」

加えて、リベラル派は「最初に結論ありき」で日本の集団的自衛権行使に反対である。
そのためには、できるだけ中国を脅威と認識したくない。
中国を脅威と認めてしまえば、直ちに日本はどう対処するのか、が問題になるからだ。
そうした思考様式から(脅威ではない)中国が主導するAIIBになぜ参加しないのか、という結論が導かれる。
現実の脅威には目をつぶり、理想論で世界を眺めて結論を下すのだ。

中国もときにウインウイン関係という言葉を使う。
だが、彼らの言うウインウイン関係は、私たちが考えるウインウイン関係とは別物である。
私たちは共存共栄から始まって、やがて互いに相手を必要とする相互依存に至る道を目指している。
相互依存関係にまで到達すれば、平和が強化される。戦争をすれば、互いに共倒れになるからだ。

だが、中国の言うウインウイン関係とは相互依存ではなく、単なる「縄張りの相互尊重」程度ではないか。
それがはっきりしたのは、2013年6月の米中首脳会談だった。

習近平国家主席はオバマ大統領に「太平洋は米中両国を受け入れるのに十分、広い」と言った。
それは「太平洋は十分に広いから米中両国で分割しよう」という意味のエレガントな外交的表現にすぎない。
これは事実上、縄張り分割の提案である。