人気ドラマ『VIVANT』が最終回の放映を終えた。スタート時からVIVANTこと「別班」(陸上自衛隊陸上幕僚監部第二部別班)
に注目が集まり、おそらく過去にないほど別班に関する記事が多数出ている。
政府がその存在を否定している謎の組織が、「VIVANT効果」でスポットライトが当たった格好だ。
そうした記事のなかで別班にいた人物として唯一実名で名前があがるのが、元三佐の故・坪山晃三さんである。
その坪山さんに私は2001年から2009年まで定期的に会っていた。

生前、坪山さんが自らを「別班」と名乗ったことは一度もなかった。
しかし、彼の実名が出たきっかけが、1973年に東京・飯田橋のホテルグランドパレスで起きた金大中拉致事件である。
世界を震撼させた前代未聞の大統領候補の拉致暗殺計画だ。
韓国の軍事独裁政権、朴正煕大統領の諜報組織「KCIA(韓国中央情報部)」による大胆な犯行であり、当時、
「自衛隊が事件に関与している」と国会で日本共産党が追及するなかで坪山さんの実名が取りざたされたのである。
ー中略ー

彼はこの依頼の目的を拉致だとは言わずに、『金大中を説得して、韓国に帰国させることだ』と話していた」
ー中略ー

当時、日米両政府は韓国政府を支持し、特に米CIAはKCIAの組織づくりに関与している。
冷戦構造のなかで北朝鮮のスパイ活動や暴発を防ぐためとはいえ、朴正煕政権の暴走は日米政府にとっては厄介な問題だっただろう。
当時、KCIAの拷問は凄惨を極めており、「北のシンパ」と疑われた人々は連行されて、
水攻めや電気ショックによる拷問室からの阿鼻叫喚が絶えなかったという。こうした実態は海外にも漏れ始めていた。

金大中は病気の治療という理由で来日していた。彼を支援する在日韓国人のグループによる護衛と秘書がつき、
KCIAの尾行をまくために、秘密行動がとられていた。それを坪山さんに割り出してほしいと金東雲は依頼してきたのだ。

「ところがだよ」と坪山さんは言う。

「毎日、金東雲から金大中が宿泊しているというホテルや支援者の自宅の住所が届いて張り込むのだけど、いつも空振りだ。
あとでわかったことだけど、実は金大中を支援する韓民統(韓国民主回復統一促進国民会議)が流す偽情報をKCIAはつかまされていて、
振り回されていたんだ」

映画『KT』でも、佐藤浩市演じる坪山さんと元自衛隊員の部下が高田馬場のマンションを張り込むシーンがあるが、
裏の裏をかく情報戦は『VIVANT』でもよく登場する。

・日本では大騒ぎとなった金大中事件
ー中略ー

金大中は目隠しをされたまま、乗用車で神戸市灘区にあったアジト「アンの家」に連れ込まれた。
そして神戸港からモーターボートに乗せて、沖合に停めていた工作船「龍金号」に運ばれ、船は韓国に向かった。
金大中の体は戸板にロープでぐるぐる巻にされ、手足に50キログラムほどの重しをつけられたという。
船底に放置された状態が続いたが、デッキに担ぎ上げられて海に投げ込まれる瞬間、警告を発する飛行機が船上に近づいてきたのである。
まさに間一髪だ。海への投機は寸前で止められて、海底に沈める暗殺計画は中止となった。
そして金大中はソウル市内のガソリンスタンドに放置される格好で、解放されたのだ。

一方、日本では大騒ぎとなった。白昼堂々と行われた拉致事件、
しかも、指紋から韓国大使館一等書記官の犯行であることが割り出されている。
被害者は大統領候補であり、犯行はKCIA。主権侵害の外交問題だ。

坪山さんが言う。

「当時の田中角栄内閣の官房副長官だった後藤田正晴さん(元・警察庁長官)から、私はこう命じられた。

『姿を隠してくれ。警視庁と公安調査庁が網を張っている。網にかかるなよ』。
ー後略ー

全文はソースから
9/20(水) 17:30配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/c63add7e42f64e60f9761bf40dba00c6c43a4545