・国際投資アナリスト・大原浩氏指摘
電気自動車(EV)に対する補助金が各国で撤廃・削減され、「EVバブルは崩壊しつつある」と
国際投資アナリストの大原浩氏は前回の寄稿で論じた。さらに大原氏は、
EV化を推進する大義名分だった「脱炭素」にもバブル崩壊の足音が忍び寄っていると指摘する。
日本企業が世界的に活躍する場が広がるとの見方を示すというのだ。

地球の気温は主に太陽光によって左右される。太陽活動(黒点の動きなど)、地軸の傾きなどの要素が大半で、
二酸化炭素の影響は一部にしか過ぎない。気温を決定する重要な原因を論じずに、
二酸化炭素だけを論じるのは非科学的である。

2022年に「量子もつれ」でノーベル物理学賞を受賞したジョン・F・クラウザー博士の「気候変動(の緊急事態)」
を否定する発言も話題だ。実際、現在のエネルギー危機の少なからぬ部分が「誤った地球温暖化論」によって悪化していることは、
クラウザー氏も指摘するところである。

ただ、限りある化石燃料にいつまでも頼れないのも事実だ。生産コスト面からも無駄に化石燃料を使用すべきではない。

そこで生きてくるのが、1970年代の2度のオイルショックを機に、
現在まで進化を遂げてきた日本の省エネ技術である。同じ国内総生産(GDP)に対して、
米国は日本の約2倍、中国は4〜5倍ものエネルギーを消費するとされる。

・超小型原子炉、人工光合成、水素がカギ
「脱炭素」が正しいかどうかに関わらず、日本はすでに無駄なエネルギーを使用しない「環境先進国」なのである。
これまでは人件費が安い中国などの新興国に工場が流出し、日本産業の空洞化をもたらした。
円高もこの流れを後押ししたといえよう。

ところが、現在では新興国の人件費が上昇し、円安傾向となっている。さらにはエネルギー価格の上昇によって、
生産コストに占める比率が急上昇している。
中国を始めとする地政学リスクも相まって、「国内への製造業の回帰」とそれに伴う日本の発展は間違いないと考えられる。

次世代エネルギーにおいても、日本は先進国だ。少なくとも今後数十年のエネルギーの中核は化石燃料と原子力になると思われる。

現在急ピッチで開発が進んでいる小型原子炉は万一の際の冷却が簡単である。
さらに安全な地中に埋設するタイプの原子炉も日立などで開発中だ。日本は世界でも「原子力技術」の大国である。
三菱重工業などで超小型原子炉の開発が行われている。
これはトラックの荷台に積めるほどの大きさで25年程度、燃料交換が不要とされる。

将来的に有望なのが、トヨタグループが共同出資する豊田中央研究所が先頭を走る「人工光合成」だ。
太陽光発電と決定的に違うのは、太陽光エネルギーを有機物(同研究所の場合はギ酸)に変換することである。

太陽光発電の場合、昼間発電した電気を夜使う場合にはバッテリーに充電する必要があるが、バッテリーの価格は高く、
5年程度で劣化する問題を抱える。

それに対して有機物のギ酸で保存する方法は、基本的に原油やガソリンの取り扱いと変わらない。
しかも、水素を生成することが容易である。

トヨタ自動車が水素エンジンを始め「水素」にこだわるのも、人工光合成という技術により、
水素を安価に大量に生産する未来を見据えているからかもしれない。

これらが実用化されれば、日本がEVバブル崩壊後の自動車産業で独り勝ちし、
脱炭素バブル崩壊後の「エネルギー大国」となることも夢ではない。

■大原浩
夕刊フジ 2023.9/25 06:30
https://www.zakzak.co.jp/article/20230925-HPNLRE6775LPBIMVG7EXB3BZRU/