インターネットに長年にわたり匿名で差別や中傷の投稿を繰り返され、精神的苦痛を受けたとして、川崎市の在日コリアン3世、崔江以子(チェカンイヂャ)さん(50)が茨城県の40代男性に損害賠償を求めた訴訟で、12日の横浜地裁川崎支部判決は、「祖国へ帰れ」といった投稿が差別的言動であることを認めた。判決後、市内で開かれた報告集会で、崔さんは「ほっとしている」と安堵(あんど)の表情を見せ、「これ以上の被害を生まない法規範につながっていけば」と話した。(竹谷直子)

 「7年というとても長い時間を経てこの判決をもらった」。集会で崔さんは差別投稿が始まってからの年月をかみしめるように語った。崔さんは2016年、国会でヘイトデモの被害を訴え、その後のヘイトスピーチ解消法成立に貢献した。崔さんを攻撃する差別投稿が始まったのは、その時期からだった。

 判決では、男性がブログに「日本国に仇(あだ)なす敵国人め。さっさと祖国へ帰れ」と書き込んだことについて、ヘイトスピーチ解消法に違反し、憲法13条に由来する人格権の侵害にも当たるとして、慰謝料100万円を命じた。弁護団の神原元弁護士は「画期的な判決。『帰れ』という言葉は、在日コリアンを長く苦しめてきた。今後、該当する差別発言が違法だ、と積み上げていける」と評価した。

 判決は、この投稿が削除された後、「差別の当たり屋」「被害者ビジネス」といった投稿を約4年続けたことに対しても、慰謝料70万円を認定した。

 会場には、崔さんを応援しようと在日コリアンのハルモニ(おばあさん)たちが書いた「さべつはゆるしません」の幕が掲げられた。在日コリアンの支援者たちも「意義深い判決を地元で生かしていきたい」「差別のない社会をつくるスタートの日にしたい」などと判決を歓迎した。

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