ー前略ー
川勝氏が、リニア工事に反対姿勢を貫く背景にはどんな事情があるのか。
地元静岡でリニア問題を取材し続けているジャーナリスト、小林一哉氏に聞いた。

地元ジャーナリスト・小林一哉氏が徹底解説
「JR東海は今回、開業時期を『27年以降』とした理由として静岡工区の未着工をはっきりと挙げている。
これは、川勝氏の反リニアの姿勢を批判したかったという思いが含まれていると思う」

小林氏は、JR東海の変更の意図をこう読み解く。

18年夏にリニア問題の取材を始めた小林氏は、著書『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太「命の水」の嘘』(飛鳥新社)や、
多くのメディアへの寄稿などを通じて、川勝氏の問題点を追及してきた。

川勝氏はこれまで、トンネル掘削工事に伴って湧水が静岡県外に流出することで大井川の流量が減る問題や、
南アルプスの生態系の問題などを挙げて、工事に反対してきた。このうち、大井川の流量問題について、川勝氏は11月28日の会見で、
上流のダムの取水を抑制して県外流出分と同量を確保するJR東海の案を容認する考えを示した。
だが、トンネル工事のボーリング調査に反対し続けており、事態は進んでいない。

川勝氏の頑迷ともいえる姿勢は何なのか。

小林氏は「川勝氏は『ああ言えばこう言う』ということがいくらでもできる人で、議論を巻き起こすが、論理は破綻している。
例えば、大井川の流量問題では、国交省の有識者会議が21年の中間報告で、
トンネル掘削による影響は季節変動などに比べて『極めて小さいと推測される』と指摘している」と説明する。

・見返り「新駅」ならず川勝氏、反リニアで頑迷 具体的なメリット提示を
その川勝氏は、静岡空港の真下を通る東海道新幹線の新駅設置を求めてきた。だが、静岡空港が掛川駅と約16キロしか離れておらず、
JR東海は難色を示して実現していない。
川勝氏がリニア問題で強硬姿勢を続ける背景には新駅の問題があるとして、小林氏はこう解説する。

「川勝氏は一時期まで、JR東海の『誠意』として、静岡空港新駅設置を期待していた節があったが、折り合えず現在に至っている。
JR東海がもっと前の段階で、『なんとか新駅を作るから工事を許可してほしい』といえば、川勝氏も認めたかもしれない。
しかし、川勝氏が反対の風呂敷を広げすぎて、反リニアの人々が川勝氏の支持者になっている。
仮に今後、空港新駅ができるという状況になったとしても、川勝氏が『リニアの工事を認める』というスタンスに変わることは難しいのではないか」

リニアは、品川―名古屋間を40分で結ぶ「夢の高速鉄道」で、日本経済の活性化、
さらには「インフラ輸出の目玉」としても期待されている。
日本だけでなく、産業政策「中国製造2025」の重点分野に「先端鉄道」を掲げる中国も開発に力を入れており、
開業の遅れは日本の国益にとって痛手となる。

頑迷に反対姿勢を貫く川勝氏の任期は、25年7月まであり、このままでは27年の開業延期はおろか、さらなる遅れも見込まれるという。
政府はどう対応すべきか。

小林氏は「リニアの沿線駅ができないため、静岡の人々にとって、リニアは自分に関係のない話になっている。
国やJR東海は、リニアができることでどう便利になるか世論を盛り上げるとともに、静岡に対して具体的なメリットを提示し、
リニアに反対し続けている川勝氏は『何をやっているんだ』という空気を静岡県内に醸成していく必要があるのではないか」と話した。

2023.12/24 10:00
https://www.zakzak.co.jp/article/20231224-4XSKXZ4CKNMCTOROCPK7Q3WVCY/