ウォール・オブ・サウンドの教祖たるフィル・スペクターも
ステレオ録音の重要なサウンド・デザインと見なされていたけど
「いや、本来はモノラルだったんだけど」と立派にカミングアウトしたのは
ミキシングとアレンジの違いを明確にして、自分は後者だと主張したかったんだろう。

その後の60年代英米ロックシーンのモノラル熱はどうでも良いとして
私は1980年代前半までの歌謡曲はモノラル試聴が基本だと思っている。
時代毎の音場感の癖に追従できるオーディオセットはほぼ皆無だし
1980年代のスタジオでもオーラトーン1本でモノラル互換を担保してた。

それが無駄だと思うようになったのは、ウォークマンでステレオ試聴がメインになったからで
けしてオーディオの進化がモノラルを排除したわけではない。
電車内での試聴に合わせラウドネスを強調したJ-POPサウンドが生まれたのは
その後の歴史で明確になっていく。これじゃ1940年代のPA機器に先祖返りだと。