これだけイイトコ獲りのように思っても
欠点はステレオ空間の再現性が悪い、音の充満するタイミングが早いとか
いずれも高次歪みの多いことからくる問題であり、その点は否定しない。
オーケストラのトゥッティでの音の変化なんてのは苦手な部類だ。
ジャズのサックスのソロも、もっと深みのあるブローイングを引き出せるユニットがある。

一方で、中低域のリズムの分解能が高いので、ドラム、ベースのキレはむしろ良い。
パーカッシヴな音での歪みは隈取りが強くなるだけで
フィックスドエッジではメカニカルな動作で強制的に引き際のキレが演出される。

フュージョン系のテイストが入った吉田美奈子「フラッパー」のダンスチューンでも
空間性を打ち消した分だけ、リズムの躍動感が浮き立つ感じがする。
もちろんウィスパーに近い吉田美奈子のボーカルも奥に沈まない。

高橋真梨子在籍時のペドロ&カプリシャスのベスト盤は
初期は演歌&ソフトロックのスローバラードからはじまり
中盤でラテン・ロックの重厚なパーカッションを織り混ぜた優秀録音だが
このドッグレースのような瞬間風速に耐えられるだけのドライブ力は十分にあると思う。
もっと音の建て込んだ、しばたはつみ「シンガーレディ」も鳴り負けない。
リズムに色彩感があるというと語弊があるかもしれないが
カンフー映画のような強靭だけど柔軟な組み手がシュパシュパッと繰り出される。
6千円のユニットとしては、これだけのメニューで十分お腹いっぱいだろう。

もともとポップスの低音は、ボリュームが膨らみがちな傾向があり
後面解放型で200Hz以下は80Hzまで10dB落ちても自然にバランスする。
むしろ出音のタイミングで楽音を掴んでる感じになる。
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