こうしたマッチョな演奏家を相手にするためのオーディオ機器が
スペック重視の機能性を最重要と考えるのは当然である。
アルテックやJBLは、ランシング氏のシアター機器でのリアリティの追求から生まれ
音楽の躍動感を劇場サイズで再生するポテンシャルをもっていた。
エレクトロボイスも屋外競技場などのPA機器、テレビでの生放送など
実況的なコンテンツをタフにこなす力を有していた。

同じ新即物主義の理解でも
1970年代の日本のスレンダーなオーディオ機器の一群は
むしろテクノ音楽に向かっていくような未来主義に彩られている。
もちろん、ヤマハのピアノがリヒテルやグールドに好まれたのと同様に
コンテンツのもつ人間味を色付けなく出すということはあったかもしれない。
ただ正確なことが感動には結びつかないというのは十分ありえる話だ。