正確な音響というニュアンスは、日本の場合はNHK技研の影響が大きい。
ステレオのノウハウは、ここでの実験的な訓練から生まれていて
三菱 2S-305スピーカー、デンオン DL-103カートリッジなど
その標準的な性能の保持は、開発年度が古いわりには正確さが秀でている。
今では漫才マイクとして知られるソニー C-38の前身であるC-37Aは
ワルター/コロンビア響の録音にも使われたもので、とても自然な音響で収まっている。

1970年代はアンチ国営の時代でもあり、犬HKなどと揶揄していたが
オーディオ技術もFM放送よりも高音質でなければなければと必死だった。
アキュフェーズ、ナカミチ、スタックス、キノシタなどは、そのなかではピカイチの存在で
アナログ技術の限界にまで挑戦して製品化した銘品である。

こうして達観すると、同じスペック競争を求めて勝敗を決した結末として
1960年代の新即物主義と1970年代にそれを追い抜いた日本のオーディオ業界は
どこか別の惑星の住人のように感じるのだ。
それは1960年代が実物を体感しながら追認する装置としてオーディオを考えたのに対し
1970年代は録音の成果物を元にオーディオでできる事柄を究めたこととも言える。