大切にアーカイブされたリマスター音源は本当にすごいと思うことがある。
やや作品としては地味だが、ブリテンとピアーズが共演した管弦楽伴奏付の歌曲は
一番古い「夜想曲」で1959年だが、全く違和感のない自然な仕上がりだ。
手持ちの音源は1989年のCDで、かなり念入りにリマスターされている感じがする。
演奏そのものの強い説得力と、録音技術がうまく一体化していること
もうひとつは声楽曲であることによる、適切なイコライジングがなされているからだろう。

イギリス物の録音では、ビーチャムのディーリアス管弦楽曲集が有名だが
1956〜57年に録音された初期ステレオの名盤は
CD化にあたってリマスターでグラモフォン賞をとったような覚えがある。
こちらは暖色系の穏やかな録音と相まって、その後の演奏ではなかなか再現できない。
(さすがに「日没の歌」はラジオドラマ風のすし詰め状態だが…)

この時期のイギリス国民楽派について、「牛糞派」とも呼んだらしいが
ナショナル・トラスト運動をはじめとする自然風景をそのまま保存する社会機構に
こうした歴史的録音もターゲットになっているように感じる。