BBCでの1970年代のFMステレオ放送が仮想のサウンドステージを理論付けたが
それ以前の放送はモノラルであったということと
レコード協会との紳士協定でレコードは放送で流さないという法律があった。
この辺は日本やアメリカと異なる文化があった。

そのため英国のラジオ放送は、必然的にレコードとは切り離されていたが
上記のマーラー演奏は、国営放送を巻き込んだ文化事業という側面と
ラジオならではのドキュメンタリー的なスクープ作りという側面とが入れ混じった
20世紀的な進行の仕方が伺える例ともいえる。

情報の海のなかをコラージュしながら進む楽曲にベリオ「シンフォニア」があり
マーラー復活の第三楽章を基調にしたのは、委嘱元のニューヨークフィルに対し
同じ時期に完成したバーンスタインのマーラー交響曲全集とも引っ掛けたのだろう。
これも1968年の4楽章版と、翌年に改稿した5楽章版があり
4楽章版でのニューヨークフィルの録音は面目末潰れで長らくお蔵入りだった。