低音域では、スピーカーで発生する制動電流が流れ難くなると音質が悪化すると言われてきました。
従って、制動電流を流れ易くするためにその経路のインピーダンスはできるだけ低くする必要があります。
これまで制動電流にダンピングファクターが大きく関係しているということで、
パワーアンプの出力インピーダンスとスピーカーケーブルのインピーダンスがよく取り上げられてきました。
パワーアンプの仕様にダンピングファクターが100と記述されている場合、その出力インピーダンスは0.08Ωです。
また、直径Φ2mmのスピーカーケーブルでは往復10m分のインピーダンス(直流抵抗)が約0.26Ωとなっています。
これまで述べてきたLCネットワークによるインピーダンスの増加分は、これらのインピーダンスに比べ、かなり大きくなる場合があり、
その影響の大きさをご理解頂けると思います。

ちなみに、LCネットワークに使用されるコイルとして空芯コイルを使用するか、それともコア・コイルとするか、
また、コイルの線径は太い程インピーダンス(直流抵抗)が低くなって好ましいがどの程度まで太くする必要があるのか迷うところです。
線径 Φ1.4mmを使用した5.9mHのコイルとして、空芯コイルでは約0.9Ω、コア・コイルで約0.3Ωの例があります。
確かに空芯コイルとした方が直流抵抗が0.6Ω高くなってその影響も考えられますが、
それに比べると100Hz以上の帯域におけるLCネットワークによるインピーダンスの増加分はさらに大きなものであり、
これらの音質への影響の方が大きな問題と言えます。