ハイデガーの優れた部分というのは、『存在と時間』という代表作以外の著作群のなかに
あるのかもしれない。

Sein und Zeit (1927)『存在と時間』
Hölderlins Hymne »Der Ister«(1942)『ヘルダーリンの讃歌「イスター」』
Nietzsche (1961)『ニーチェ』

『存在と時間』が書かれたのは37歳の時。
『ヘルダーリンの讃歌「イスター」』が書かれたのは53歳。
『ニーチェ』が書かれたのは72歳。

哲学史で注目されている『存在と時間』は、まぎれもなくハイデガー初期の作品。
円熟期の著作こそ、すべての哲学者の中核的・根本思想であるから、『存在と時間』の根
本テーマがどれほど優れたものであるにしても、それはハイデガー初期の思想過程に過
ぎないということでしょうか。