■逮捕、死亡説も

 危うさと隣り合わせの過激な手法は裏目に出た。「株を買う資金を担保の10倍まで融資する」とうたって全国の投資家から約584億円を集めるも、資金を返しきれず、60年に警視庁に詐欺容疑で逮捕される。
平成元年に詐欺罪で懲役6年の実刑判決を受け、4年に仮出所した後は麻布十番に事務所を構えて仕手戦に舞い戻ったが、かつての勢いは失われていた。

 暴力団から得た数十億円の出資金を返せなくなったのを機に、表舞台から姿を消し、一時は死亡説もささやかれた。
平成18年、自宅に火をつけようとした疑いで逮捕され、再び存在が明るみに出たが、関係者によると、このときすでに心身の健康に支障をきたしていたとみられる。

 都内近郊を転々とし、たどり着いたのが葛飾区のアパートだった。

■体調不良続き

 アパートの関係者によると、中江氏が入居したのは24年。投資ジャーナル時代の同僚が「空き部屋はあるか」と大家に相談し、「絶対に迷惑はかけさせない。家賃も払わせる」と約束したため、入居を了承したという。家賃は月4万8000円だった。

 入居の日、タクシーで到着した中江氏。持ち物は衣服だけ。同僚らがじゅうたんやトースターなど、生活に必要なものを提供すると、中江氏は「ありがとうございます」と頭を下げていたという。

 部屋にはひっきりなしに知人が出入りし、「俺の部下だよ。いっぱいいるんだよ」などと話していた。最近は体調が優れず、おむつも着用していたといい、今年の正月ごろには「血圧が190もある」と周囲に訴えていた。

 警視庁亀有署はアパートの出火原因について、たばこの不始末による失火とみている。知人の1人は「たばこは昔からよく吸っていた」と肩を落とす。

 火災から数日後、2階にある中江氏の部屋を訪問すると、玄関近くに、誰かが手向けた花束が、そっと置かれていた。