1七波羅探題 ★2023/03/31(金) 06:40:20.35ID:KZprz7sj9⋮
読売新聞3/30(木) 5:00配信
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230329-OYT1T50353/

 50歳代の母親の異変を確信したのは、その動画を目にした時だった。

 <世界を操る闇の政府>

 2020年11月、東京都内の女子大学生が、同居する母親から薦められた動画のタイトルには、不穏な文字が並んでいた。

 LINE(ライン)で送られてきたリンクを深夜、一人で恐る恐る開いてみた。すると、子どもがおびえている海外の映像や英語の音声とともに、日本語の字幕が流れてきた。

 世界の富裕層が牛耳る秘密組織が子どもを売買している。その巨悪と戦っているのが米国のトランプ大統領(当時)だ……。

 理解しがたい内容が延々と続き、頭が混乱した。しばらくすると、母親からメッセージが来た。

 <これは、命がけで真実を伝える動画なのよ>

 調べると、米国の「Qアノン」と呼ばれる集団が唱える陰謀論だった。「お母さんは、これを本気で信じているのか」。暗たんたる気持ちになった。

 この時期、「米大統領選で不正があった」という言説がSNS上で広がっていた。母親は闇の政府の関与を主張するようになり、家族に「根拠がない」と指摘されると目をむいて怒り、「私の世界ではこれが真実なの」と泣きながら訴えた。

 その姿は、娘が知る母とはまるで別人だった。

 SNSでは関心がある情報ばかりに包まれる「フィルターバブル」が生じ、極端で刺激的な考えに染まることがある。

 一日中、パソコンにかじりついていた母親も、いつの間にかその罠(わな)にはまっていたのだろうか。