■中国は日本の年収の3倍でも軽く出せる
 中国企業が日本人アニメーターを採用できるのは、市場の拡大を背景に待遇が良いからに他ならない。

 調査会社帝国データバンクでアニメ業界の動向を調べる飯島大介氏は「市場が拡大する中国にとって、日本のアニメーターは喉から手が出るほどほしい。
 日本の年収の3倍でも軽く出せるので、今後も中国勢からの人材引き抜きは激しくなるだろう」とみる。

 実際に、カラード社と日本の制作会社では、従業員の扱いに大きな違いがある。カラード社はアニメーターを社員として雇用し、
新卒給与は業界平均より高い約17万5000円。通常時はフレックス勤務で、業務が集中する時期は残業もあるが、
その分ちゃんと代休を取れるなど働きやすい環境にした。住宅手当や交通費も支給する。

 カラード社の江口文治郎最高経営責任者(CEO)は「優秀な人材を囲い込むためにも、アニメーターの待遇や環境を整えることが最優先だ」と語る。
 その背景には、日本人アニメーターの給与が安すぎるという現実がある。
 アニメ産業は「日本のお家芸」と言われるが、その労働実態は長時間・低賃金がはびこる。

 一般社団法人日本アニメーター・演出協会(東京・千代田)の2019年の調査では、
日本で正社員として働くアニメーターは14%。大規模な一部の制作会社を除き、半数以上が委託契約のフリーランスだ。

 アニメーターの平均年収は440万円で、1カ月の休日は5.4日。新人は年収が約110万円という調査もある。
 現在の収入に満足するアニメーターは3割弱で、8割が老後の心配や精神的疲労を訴えた。