おそらくリリーを
オスカーと対等に演じることに怯まない人材を探すとしたら、
近年の宝塚歌劇では
昨年退団した愛希れいかくらいしかいなかっただろう。

だからこの公演は、
似合い過ぎるほと似合う口ひげをたくわえた、
余裕綽綽の大人の男の風体の中で、
ジタバタと可愛らしさを覗かせるオスカーを、
演技巧者ならではの可笑しみで演じきった望海の功績と、
その望海に
今は立場を異にしている大スター役として体当たりしつつも、
ちゃんとトップスターを凌駕しないトップ娘役だった真彩の
現雪組トップコンビが、
これまでにない役柄で舞台を生きたことを、
何よりの美点として記憶したいものになった。

このコンビに
海外ミュージカルを演じさせたいのは至極最もだし、
コンビのコメディーを歓迎した観客の喝采が、
舞台を更に弾ませていった相乗効果にも、
やはり
宝塚歌劇ならではの舞台と客席が創り出す美しい交感がある。