ジェンヌが理事として残るということは、宝塚に人生を捧げるということです。役者としての活躍の場はほとんど宝塚に絞られることになりますし、また結婚や出産は現役ジェンヌとしてはタブーですから、一生独り身であることを事実上誓約することになります。そのような条件を飲める方は、トップさんの中でも少ないのではないでしょうか。

春日野八千代さんが高齢になり、宝塚の新たな精神的支柱となりうる人物をトップスターの中から選ぼうという流れになったのでしょう。そうした中、上記の条件を飲んだのが轟さんだった、ということだと思います。もちろん他にも適任の方はいらしたと思いますし、そういう人たちにはちゃんと打診していたのではないかと思います。

轟さんは確かにトップスターであった当時から完売御礼超人気、とまではいえなかったと思います。また、今のスターさん中では比較的小柄かもしれません。しかし、顔立ちは非常に端正ですし、声の作り方や所作など、まさに宝塚のダンディズムを体現しているといえるのではないでしょうか。このような下級生男役のお手本となるTHE・男役である轟さんのようなスターなら、トップ・オブ・トップとして君臨させても問題ないと劇団は判断したのだと思います。