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 トップを張ったスターの処遇として「まず、今後1年間は5組に順次出演してもらい、少なくとも1年に1回は主役を張る作品を用意する。タカラヅカの公演マーケットは拡大しており、いつまでも同じことをしていては、チャンスを逸することになる」と、専科の活動の場を広げる方針を明らかにした。

 専科は旧来、ベテランの演技派をプールした組織だったが、人気、実力とも兼ね備えた主役級スターを投入することで、専科単独での公演も視野にいれたものとみられる。轟の加入はいわば“6組目”の公演チームを編成したともいえる強化で、轟を“トップの中のトップ”として、外部にもアピールしていきたいのだろう。

 実際、“6組体制”により宝塚、東京の拠点劇場のレギュラー公演のほか、公演回数増の要望が強い名古屋、福岡の公演も増強できる態勢が整う。

 また、全国ツアー(地方公演)の長期興行や今年、テストケースとして東西のコマ劇場で初めて行ったOGとの合同公演の定期公演化、さらに外部の劇団とジョイントした作品にまで手を広げることも可能で、そうなれば興行収入増がはかれるほか、演劇界での認知度を高める社会的効果も期待できる。

 轟は入団当初から男っぽい雰囲気を持つ二枚目男役の線を守り、男女の性差が薄くなった最近の傾向を反映して中性的な妖精(ようせい)タイプの男役がもてはやされる風潮と一線を画してきた。

 歌唱力と色の濃い役柄を得意にするキャラクターで、まだ、中堅クラスだった平成4年に「忠臣蔵」で堀部安兵衛を好演、さらに「風と共に去りぬ」でレット・バトラーの男臭さを見事に演じて、トップ昇格のレールに乗った。「エリザベート」ではヒロインを暗殺するルキーニの狂気を体全体の漂わす演技力を発揮。その勢いに乗って、9年から雪組トップに就いた。

 昨年のミュージカル「凱旋(がいせん)門」の演技で芸術祭優秀賞を受けるなど、現在のタカラヅカの二枚目男役を代表する存在に成長。