いまの現実の、この日本でもっとも汚ならしい県の一つになってしまった風景は、
ここ十年来大阪あたりから出てきたおでこのぴかぴか光った連中がつくりあげたものである。
建売り屋という、まるで巾着切りのように素ばしこい稼業の人の人相というのは
どうも一種類にきまっているように思える。
大和の野みちを歩いていると、冬田のなかで巻尺をもった男がセカセカと這いまわっているのをよく見かけるが、
たいていは額の薄皮が太鼓の皮のように張り、それがあぶらをすりこんだようによく光っている。

街道を行く1 司馬遼太郎(大阪府出身)