加えて、現在の若者ファッションは、とてもシンプルでミニマル(最小限)なスタイルが流行しています。
さらに、40〜50代の人が若かった頃に比べると、アイテムの使用が短期化しており、消費的な購買になっていますね」

そう語るのは、「MEN'S CLUB」や「Gentry」など、数多くのファッション誌で編集長を務めてきたファッション評論家の林信朗氏。
同氏は、上記のように「若者のおしゃれ観」が変化した理由として、2つの背景を挙げる。以下がそれだ。

 (1)ファストファッションの台頭
 (2)高級ブランドの販路拡大

これらの事象を考えていくと、時代を経ておしゃれの定義がどのように変化し、どういった地点へと移動したのか鮮明に見えてくるとのこと。1つずつ掘り下げていこう。

● ファストファッションの土台の上で 「おしゃれ」は無地が主流になった

まず取り上げるのは、「(1)ファストファッションの台頭」だ。これは、多くの人が「ファッション業界の変化」として思いつく事柄だろう。
ユニクロやGU、H&Mなど、低価格の衣料品メーカーが店舗数を拡大。
安さに加えて、一定のデザイン性を兼ね備えたことで、若者が「おしゃれ」と感じるラインを安価で達成できるようになった。

「ファストファッションの台頭は、2000年代からの大きな傾向です。
流行の服を1000〜2000円といった価格で買える状況は、昔ならありえませんでした。
こういったファストファッションは大量流通が基本であるため、どうしても個性的なアイテムは減っていきます。
それがシンプル・ミニマルなスタイルの隆盛につながっていきました」(林氏)

近年の若者が好むスタイルとして多いのは「無地」のものだという。
それについて、実際に20代の若者に聞いてみると、こんな声が聞こえる。

「ファストファッションの場合、同じアイテムを持っている人が多い。
その中で個性的なデザインを選ぶと、もしも同じ服を着ている人がいた場合に恥ずかしくなる。
無地の服なら、他の人と被ってもそれが目立たないので買いやすい」(23歳女性)

シンプル・ミニマルを好む理由はいろいろあるだろうが、そのひとつに「他人との被りが気にならない」という深層心理が存在しているのではない