「好きだ」


またしても耳を疑うその言葉。牧、よりにもよってお前もかよ。


俺はもしかしたらまだ気を失っていて病院のベッドで寝ているのかもしれない。


理解が追いつかない。何が起こったのか判らない。


春田に突き飛ばされた後、牧は立っているのがやっとと言う様子で浴室の壁に寄りかかっていたが、次第にズルズルと崩れ落ちていった。


タイルに座り込んでしまった牧のスラックスやシャツはあっという間にずぶ濡れになっていったが春田にはシャワーを止める余裕なんて無かった。


たった今言われた、された事は本当に現実なんだろうか。


「………ははっ……すみません…」


重い空気を打ち消したかったのか牧は乾いた笑い方をしてそう呟いたが、俯いていて表情は全く見えなかった。


「…いや、あの………えっ…?」