「字も絵も下手だし、俺の作った飯食って子供みたいにすげー喜んでるし、美味しいって言われたら普通に嬉しいし、春田さん何も出来ないんだから……この人俺がいなきゃ駄目じゃん…って思っても仕方ないじゃないですか」


抱き締めていた牧の腕の力がふっと緩み、春田は恐る恐る離れてみると、牧の濡れて張り付いた前髪の隙間から目が合った。


「あ…」


牧は泣いていた。シャワーで濡れただけじゃない、病院で見た時以上に瞳が赤くなっている。


又初めて見る牧の表情だった。


「なん、だよ……」


部長もお前も男なのにどうして俺なんだよ。


母親にも愛想を尽かされた俺なんかのどこが良いんだよ