労働省婦人少年局では,1948年末から1951年6月までの2年半の間に,「いわゆる人身売買」に関
する3回の調査を実施している。年齢別にみると,18歳未満の児童のなかでは17歳が最も多いが,
10歳未満も計6名いる。一方,18歳以上の被害者は合計で1,166名おり,18歳未満の児童総数を上回
る数となっている(表1)。
他方,労働基準局の調べによって,1949年1月から1951年12月までの3年間で発見された2,480名
の被害者について,年齢別・職業別に分けたものが表2である。表2からみると,女性の被害者の
割合は約8割に上っており,形態別にみて「接客業」及び「女中」では100%,「紡織業」や「子守」
においても8割弱から9割以上を占めているが,「農業」「店員」「その他」では,男性被害者の方が
多くなっていることが分かる。全体としては,女性被害者の多さから,「接客業」及び「紡織業」が
被害形態として3割強を占めているが,「農業」についても2割程度あることを見落としてはならない。
もともと1950年以前の被害は「農業」におけるものが65%,「売春婦」として見つかったのはわず
か1.4%であった(労働省婦人少年局 1953:74)。そして,中央青少年問題協議会が青少年保護育成
の運動において「いわゆる人身売買」の問題を年少者の人権擁護推進のために取上げたのは,主に
1950年以前の統計実態に拠っていた。つまり,「いわゆる人身売買」は,当初から売春をはじめとす
る「接客業」における女性のみを対象として問題化され,対処されようとしていたわけではなかったと
いうことである。

 「人身売買」の定義再考にむけて――「いわゆる人身売買」と労働搾取問題 より
  http://oisr-org.ws.hosei.ac.jp/images/oz/contents/627-03.pdf