>>612
再掲しますね

萌音安子の英語力ばかりに注目するのはもったいない。
【これまで英語=稔によって消去あるいは隠蔽されてきた安子のアメリカに対する愛憎】が、
ここに来て初めて前景に飛び出してきた。
安子は【マスターの複雑な対米感情、葛藤と屈折した罪悪感に接した】。
さらに【るいの問いかけ】「お婆ちゃんがお父さんを殺した英語は聞きたくないと言ってた。
【お母さん何で私はカムカム英語聞いてるの?】」に答えることができなかった。
ここに至り安子は初めて「【英語と私」が鋭い矛盾を抱えている】ことに気づいたのだった。
そして、敵国アメリカ軍人ロバートの問いに稔を回想する形で答えるうちに次第に高揚していき、
稔を奪ったのは目の前にいる軍人が所属する国家すなわち英語の国アメリカであることを【はっきりと自覚】した。
しかし、何故英語を?安子はまだ回答を出せない。
そこで逆に安子の方から「もう夫はいないのにどうして私は英語を勉強しているんでしょうか?」
こう夫に死を齎した勝者に対して鋭く切り返したのが、今回の白眉にして屈指の名場面となるであろう
ラストのセリフである。