「新幹線・空港新駅」五里霧中 県、19年度も予算計上

リニア中央新幹線の建設に合わせ、静岡県は、静岡空港に直結する東海道新幹
線・新駅の設置をJR東海に切望し続けている。県としては技術的な課題をク
リア。JRは「新駅を造る構想はない」とすげないが、二〇一四〜一八年度に
計四千九百万円の関連予算を投じた。一九年度予算案にも新駅の利点を検証す
るため五百万円を盛り込んだ。

静岡空港は島田、牧之原市境に立地する。鉄道はつながらず、バスで島田駅か
ら二十五分、掛川、藤枝駅からは三十五分ほどだ。

新幹線は空港の地下を走っている。県の構想によると、空港の西側の地下か地
上に新駅を造り、空港ビルに直結させる。東京や名古屋へ足を延ばしやすくな
り、通勤圏が広がるほか、インバウンド(訪日観光客)の呼び込みにも効果的だ。

国内には新幹線駅と空港が直結している例はなく、県は建設費を約四百億円と
独自に試算する。

新駅は地下に引き込み線が必要で、県は一四年度、空港下に大規模なトンネル
を掘ることが技術的に可能かを検証。一五年度、県の有識者検討委員会が空港
ビルの西側七百メートルに新駅を設置する具体案をまとめた。一六年度はいざ
着工に備え、十億円を予算計上し、結局、一円も使われなかった。

一七、一八年度は建設による周辺住民への影響を調査。開会中の県議会二月定
例会に提案している一九年度予算案には、新駅のメリットを具体的に検証する
調査費として五百万円を盛り込んだ。予算案は八日に採決される。

二月末の本会議では、共産党県議が調査費の必要性をただし、県側は「交流拡
大、地域活性化など県の発展に大きく寄与する。期待される効果事例を分かり
やすくまとめるための経費」と述べた。

JRは一貫して新駅建設を否定する。空港新駅を新設すると、静岡駅まで二十
八キロ、掛川駅まで約十五キロとなり、担当者は「駅間が短くなり、新幹線の
性能を発揮できない」と説明する。

ただ、リニアが大阪まで全線開業すれば、「のぞみ」の役割がリニアに移行し、
「ひかり・こだま」中心のダイヤ編成に変わる東海道新幹線は、停車駅が増加
すると認めている。

県交通基盤部の森本哲生政策監は「いつでもJRと協議に入れるよう、県は独
自でできることを進めている」と話す。

◆意思表示としては評価

日詰一幸・静岡大教授(行政学)の話 JRとの交渉は暗礁に乗り上げており、
今の段階で実現可能性は低い。独りよがりで予算計上を継続している印象は否
めないが、JRとの交渉を優位に進めるため「新駅設置のプロジェクトを諦め
ていない」という意思表示と考えれば、一定の評価はできる。県民の理解を深
め、地域住民の力を借り、誘致運動を活性化させる目的もあるのだろう。
https://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/tokai-news/CK2019030502000096.html