商品広告で「こだわりの」とうたっているのを見ると、どうにもげんなりする。作り手
の「こだわり」を、みずから言わなきゃ買い手に伝わんないご時世なんだろうけれど、
煩わしい。
遠い国の縫い子さんをギリギリ安い賃金で雇って、編み飛ばしたカーディガン。写真を
見ただけで、ひと冬着れぱへたへたになるのがわかる質感に、それ相応の超超低価格。
そんな商品まで「細部までしっかりこだわって作りました」と書いてある。
たしかに「こだわり」は品質の形容ではない。売り手の主観の問題。だからこそ使われ
やすいのもわかるけど、それじゃ「がんぱってるから買ってね」と言われてるのと変わ
らない。甘えないでほしい。
一方で、無農薬で作った野菜に餌から「こだわって」育てた銘柄肉で作った「こだわり
の」料理、なるものをウンチクとともに出されると、もちろんその「こだわり」は正真
正銘ホンモノの「こだわり」なのだろうが、これはこれで食べる前からもう食傷気味だ。
逃げ出したくなるのをこらえて食べて美味けりゃまだいいんだが、これがとんでもなく
まずい!という時も、ある。本気で「こだわり」を呪う瞬間だ。
そもそも売り物って、こだわって、こだわりぬいて、作り続けなけれぱいけないものな
んだろうか。みんなが求道者のようにならなけれぱいけないものなのだろうか。もっと
適当に作ったものが、十分に売れ続けるほうが、作り手売り手として、ゆったり平和に
暮らしていけるんじゃあないか。
ともあれ買う方も疲れるんで、こだわりたい人はせめて何も言わずにこだわって下さい。
お厳いします。(ルポライター、イラストレーター)