なぜ塩にぎりに白湯なのか、邪推した人も多かろう

元来少食な上に、天才画家は神経が繊細なのだ
図書館では時折周囲のホームレスの見た目、におい、気配で食欲が失せるからだ
金がないからではない
天才画家は頭脳労働者であるから糖質が必要なので仕方なく食べるのである
天才画家にはタンパク質や脂質などという余計なものは必要ないのだ

また仏道を嗜んでいるから美食の貪りはないということもある
金がないとかそういう理由ではなく「必要がない」
本当に塩にぎりと白湯以上のものを欲求しないのだ
簡素な和装に塩にぎり、美しかろう
天才画家はこうでなくてはならないのではないか

実のところ新聞なんぞ読んでいるふりだけである
1時間近くかけて隅から隅まで目を通している姿を見せることが必要なのだ
なぜなら、天才画家は下らない世事にかかずらわされることなどないが
この上なく優雅に新聞に光を照らすのである
そうして高みから世間を見下ろす人種が居るということを平民に知らしめる事が大切なのだ

妙齢の美人天才画家が手にし目を通し、美しい所作で戻した新聞を
平民や乞食が先を争って読む
有り難かろう?
一種の儀式であってこれが大事なのだ

その様にして図書館でも画家というものの地位を上げるのも
天才画家ゆえの務めである

故に負けず嫌いで早朝から先頭に並ぶのではない
自らの天才画家としての社会的責務と了解するからなのだ