京アニにとって目下一番の問題は、今後どんな作品を作るかだと思う。
人員確保については頑張れば今後2年を待たずして事件以前レベルに戻せると思う。

自前の養成塾を毎年継続していながら、会社の規模を拡大する様子もなかったということは、
毎年一定数の退社者が出ているということ。事実、それなりのビッグネームの退社は相次いでいた。
あの事件で、退社を考えていた主要スタッフがいたとしても、世論的に退社が困難となり、
犠牲者以上の人材流出は今後当面は防げる。

仮に退社したスタッフに三顧の礼で戻ってきて貰えれば36名全員を1から育成する必要はない。
復帰スタッフ、他社からのスカウティングも含めれば、養成塾で育てる必要があるのは10名〜20名。
今期は「相当数」の受講生がいる模様で、少なくとも2桁は京アニに入社となるであろう。

ここから先は、新旧スタッフが力を合わせて、何らかのアニメ作品を作るしか技術の伝承・習熟はありえない。
それがTVアニメだろうが、劇場版だろうが、予告編だろうが、あるいは企業や自治体のCMだろうが、
何らかのアニメ作品をどんどん作るしかない。

京アニ最大の問題は、作るべき作品のレベル低下が目を覆わんばかりだということ。

35億の義援金は多いのか少ないのか。
私見であるが、氷菓あたりが分水嶺になると思う。
氷菓より後の作品群だけならば、個人的な印象だが、義援金はせいぜい5億、2桁は厳しかったと思う。
逆に、氷菓の直後にあの事件ならば、義援金は100億は無理でも50億では収まらなかったと思う。

KAエスマ文庫に力を入れ始めてから京アニ作品は魅力の少ないものになった。

作画力だけが京アニではない。
どんな作品を原作に据えるのか、その視点のシャープさこそが京アニの名声を高めたのだ。

なにが京アニ文学賞だ。
“過去最高の作品”ヴァイオレットなど高校の文芸部レベルの駄文ではないか。
しかも、その原作を目を覆わんばかりに改変して蹂躙している。
京アニは角川でも目指したのだろうが、こんなことをやっていてKAエスマ文庫には未来などない。
二十世紀電気目録は多少期待できなくもないが、今後KAエスマ文庫などやめてしまうべきだ。
あんなレベルの原作中心のアニメしか作れないなら人材確保にも悪影響を及ぼす。

いまやライトノベルならずネット小説までアニメの原作になりうる時代だが、
京アニはまだ目を付けられていない領域に原作をスカウティングしなければならない。

古典文学でもいい。詩集から発想を飛ばして一つのアニメ映画を作ることだってできるかもしれない。

完結済の未映像化漫画など宝の山だ。少女漫画など、男は見ないという先入観から映像化のハードルが高すぎる。
例えば京都がらみで「とりかえばや」などどうか。京アニの描く平安装束など胸が躍る。
「女王の花」はアニメ化されないとすれば、もはや日本のアニメ・漫画文化の罪悪だ。
これをアニメにできる作画力、繊細な心情描写、クオリティに妥協を許さぬ姿勢が必要なアニメ会社は京アニ含めて5社もあるのか。

なお、例に挙げた完結済漫画2作は、TVアニメだと連続2クールは必要。
しかしそもそも、2クール程度は余裕で作れる人員体制が望ましいのだ。
京アニは人材の流出を止め、新人を育成し、他社から積極的なスカウティングをして人員確保に邁進しなければならない。

でも、全ては夢のある素晴らしいアニメを作るという大きな山に登るため。
足場は悪く踏跡も薄くとも、絶景の登山道だ。