いま、「心」「感情」が重視される映画が増えている

―いま、映画の状況あるいは傾向にはどんな特徴がみられるのでしょうか。
高畑 世間では、泣ける映画が大ヒットしています。「泣けた」が映画のポイントです。現実の生活はなかなか快い気分にさせてくれません。現実を描いてもいい気分の世界に連れこめないので、映画でもテレビでも小説でも、現実に手を加えるわけです。人びとは映画を観て感情を刺激されて感動し、快い気分になりたいのです。
 これは映画に限りません。本のベストセラーなども「感激して泣いた」とか、そんなものが多い。現実には起こり得ないようなファンタジーに酔っています。今はそれだけ皆苦しいのだろうと思います。
 つまり、理性を眠らせて感情的になって心をとろかせてくれるものが喜ばれていますね。