>>181

なぜハトが帰れなくなっているのか。
樋口さんは「天候が悪いと帰りも悪い。強風で遠くまで流されると戻りにくいから。
ハトは地磁気で方角を知るといわれていて、実際にレース直前に地震があるとなかなか戻ってこれない。
帰りが悪い理由は一概には言えないが…」と前置きしながら「やっぱり、猛禽(もうきん)類の影響が大きいのでは」との説を打ち明けた。

ここ数年、ハヤブサやオオタカなど鳥類をエサにする猛禽類が、都心で頻繁に目撃されるようになったという。
樋口さんは「訓練でハトを飛ばした途端に、目の前で群れがハヤブサに襲われたこともある」という。
五十年以上も下町でハトを飼育してきたが「それまでこの辺りで猛禽類はいなかった」。

同地区に所属する江東区牡丹の愛鳩家永井勇さん(58)も「去年は鳩舎内にまでハヤブサが入ってきた」と漏らした。
オオタカなどに詳しい独立行政法人森林総合研究所の研究員川上和人さんは
「鳥を食べる猛禽類は一九八〇年代以降、都市に向けて分布が拡大している」と説明する。

財団法人山階鳥類研究所の広報担当者も「特にオオタカは環境保全の旗頭として保護運動が盛んで、
最近は都市部でもだいぶ増えているようだ」と指摘。ただ、すべての猛禽類が増えているわけではないという。
「カエルやヘビを食べるサシバなどはむしろ減っている。ドバトやムクドリなどをエサにし始めた
オオタカやハヤブサが、どんどん都市部に進出して“勝ち組”となっている」と補足した。