>>110 の続き
飛んで逃げることができないので、仕方なくヒョコヒョコと歩いて
3メートルほど離れたエレベーターホールの隅っこまで移動していく。
本人はいちおう隠れているつもりらしい。

そこなら屋根があるのでカラスからはあるていど隠れることができそうだけど
人間からは丸見えで手も足も届くし、少しも隠れてないわけだが。
それに、実をいえばカラスだってそのあたりまで来ることがある。
飛べない野鳥が安全に過ごせる場所なんて、ありはしないのだ。

それにしてもこの鳥、小動物にしては感情表現が豊かで、仲間と一緒にいるときは「はしゃいでいる」気がしたし
飛べずに歩いて逃げていくときは「意気消沈している、失望している」ような気がした。

「こんな小さいのに喜怒哀楽があるのかよ、鳥ってけっこう賢いんだな。マジで知らなかったわー」
と感心しつつも、騒々しいことこの上ないし、たった1日で廊下や壁がフンだらけになってしまった。

その後、鳴き声の騒音を避けるため、外出しようとしてエレベータに乗った。

だが勝手に押しかけてきた野鳥が人間の棲家に舞い込んで
「人間は危害を加えないから大丈夫」とばかりに安心しながら
騒音やフン害をまき散らしている状況を思うと
「なんで俺が避難しなきゃならんのだ」と無性に腹が立ってきた。

「やっぱりあいつにどいてもらう」

そう決意すると、もう一度エレベーターに乗り込んだのだった。(続きはそのうち)