【石平のChina Watch】20代蝕む「借金漬け経済」

 昨年7月12日付の本欄は中国国内の巨額負債問題を取り上げたが、今年1月、
負債総額に関する驚くべき数字が中国の経済学者によって披露された。
中国人民大学教授の向松祚氏は1月20日に上海で行った講演で、
今、中国国内で各方面の抱える負債総額は「約600兆元(約9700兆円)に達していると語った。
これは、日本の名目GDPの18倍に近い、天文学的な数字である。

 今の中国経済はまさに莫大(ばくだい)な負債の上に成り立つ「借金漬け経済」であるといえるが、
実は近年、この国の20代の若者たちまでが「借金漬け経済」のとりことなっているのである。

 先月下旬、中国国内の各メディアは香港上海銀行(HSBC)が行った経済調査の数字を大々的に報じた。
それによると、今の中国では、20代の若者たちが抱える個人負債額は1人当たり12万元で、
この世代の平均月給の18倍強に相当するという。

 「12万元」となると、日本円にしては約200万円。
現時点での中国国民と日本人との平均収入の格差を考慮に入れれば、「負債額12万元」は、
日本での感覚で言えば、20代そこそこの若者たちが平均して「500万〜600万円の借金」をかかえていることになる。
まさに驚愕(きょうがく)に値する異常事態であろう。

 中国の20代が抱える負債の多くは民間の消費者金融からの借金である。
例えば中国で有名な消費者金融業者「蟻金融服務集団」が運営する「花唄」という金融サービスには、
20代の若者、約4500万人が登録し、利用しているという(『2017若者消費生活報告』)。
つまり、全国の20代の4人に1人が、この金融サービスを利用しているという計算である。

 もちろん「花唄」以外にも若者たちをターゲットとする消費者金融が多くあって繁盛している
。実際、全国で消費者金融を利用している人々の半数近くが20代の若者である、
という調査結果も出ているのである。
https://www.sankei.com/column/news/190221/clm1902210003-n1.html