浅田彰 2017年フランス大統領選挙の後で
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映画『シン・ゴジラ』で、小池百合子をモデルにしたと思しき女性の防衛大臣が極端なタカ派として描かれているのは、その点では先見の明がある
と言うべきかもしれません。ただ、政治的アレゴリーを主軸とする映画にするなら、アーロン・ソーキンのレヴェルは無理としても、もう少しまと
もな脚本を用意し、一応それらしく演技のできる俳優を選ぶべきなので、防衛大臣役のみならず、いずれは大統領を目指すというアメリカ人エリー
ト女性を演ずる石原さとみなどはヤンキーが駅前留学でバイリンギャルになったつもりにしか見えない、これではまともな映画としては通用しません。
放射能怪獣ゴジラは、暴走した原子力発電所のアレゴリーであり、福島第一原子力発電所では注水による冷温停止に失敗して大事後を起こしたのに
対し、映画では冷却剤注入によるゴジラの冷温停止に成功する。ただ、動かなくなったゴジラは、東京駅の廃墟の傍らに立ち尽くしたままであり、
日本はこの問題に直面し続けなければならない…。このストーリーは単純ながら効果的と言っていいでしょう。ただ、左右の政治的対立による停滞
を超えたプラグマティックなテクノクラート集団が、例外的事態に際して非常識とも思える大胆な決断を行い、事態の収拾に成功するという政治的
ファンタジーこそは、ファシズムなどを生み出した「維新」のイデオロギーであるということを、忘れるわけにはいきません。