この作品、シベリア出兵と正力松太郎に着目して成功している
シベリア出兵は日本版ベトナム戦争でPTSDにより帰還兵が苦しんだ
その事実を掘り起こした点は評価に値する
登場人物たちの様々な思いが錯綜する「バンザイ」に集約されていて見事だ
関東大震災で「朝鮮人暴動の噂」を流した正力の意図は日本人による暴動を防ぐため
それが成功し、情報を握ることの重要さを学んだ彼は後の新聞、テレビで活用する
戦後、日本の世相として有名になった街頭テレビでの力道山の活躍がまさにそれ
しかもGHQの日本に対する情報戦の一環なのだから世相をも操作した力技には恐れ入る
このときも朝鮮人を利用するというのは歴史の皮肉だろう
正力は日本敗戦の一因でもあるスパイを日米野球で呼び込んでしまったこともあり
左はもとより右からも要注意人物だったのだから
映画の中での正力暗殺が、もし成功していたら中濱鐵はヒーローだったかも
とはいえ、詩人としてのアジテーション能力が映画の中濱にあったらと思う
そこが残念