撮影現場で怒鳴る監督を見たことがない

――威圧的な人は全然いないのですか?

尾崎:みんなものすごく優しいですよ。俳優がとてつもないプレッシャー
のなかで自然に表現することの大変さを分かってくれているので、なるべ
く俳優がリラックスできるように務めてくれます。

――監督やプロデューサーも?

尾崎:稀に無表情で圧をかけてくる監督や製作者もいますが、ほとんどの
人は優しいし、緊張しないような雰囲気作りをしてくれます。僕はアメリ
カで15年間活動していますが、撮影現場で怒鳴る監督をひとりも見たこと
はありません。監督が怒ると俳優は萎縮し、実力が出せないことを監督は
分かっているからです。実際、『硫黄島からの手紙』の現場でクリント
(イーストウッド)さんは絶対に声を荒らげませんでしたよ。彼の場合、
声がもともと小さいということもありますが、くしゃみをしたらその声が
スタジオ中に響き渡るくらい撮影現場も水を打ったようにシーンとしている。