>>359

 冒頭の男性・文は松坂桃李が演じた。最初に顔がアップになったとき、これまでの松坂とは全く印象が違っていた。目が大きく、あごの線も尖っている。髪は額まで垂れている。実年齢より若い役だが、若さと老成した感じが入り混じる。目の焦点が定まっているのか、定まっていないのかもわからない。

 その表情は15年後、更紗と会ったときも変わらない。更紗同様にいったい、内面に何を抱えているのか。時間軸を突き抜けたかのような松坂の表情からは時間の経過の残酷さが刺さってくる。見事であった。