そこでトーンは一変し、狼狽えるようなオッペンハイマーの姿に「お前は全てを破壊する力を与えてしまったのだ」との無力感に苛まれたようなボイスオーバー(声の主はケネス・ブラナーだが、役どころはまだ分かっていない)。映像はモノトーンに変調して、原子力委員長ルイス・ストローズ(ロバート・ダウニー・Jr.)は「大統領は次がどうなるかを知りたがっている」とオッペンハイマーに問う。「次、ですか?」。次に何が起こったかは歴史に明らかだが、本作はどのようにその影を描くか。

入り組んだ複雑なプロットと共に、エモーショナルで大胆なドラマを描く重厚な作品で知られるノーラン待望の最新作は、日本の観客にとっても緊張感高い原子爆弾の開発がテーマ。主演のキリアン・マーフィーは本作の脚本を史上最高の出来だと絶賛し、「心から驚き、感銘を受けると思う」と語っている。本作でノーランは、「歴史上最も重大な出来事」に観客を連れて行くと宣言している。

テーマ性も重大である一方、原爆実験シーンをCGなしの実写で撮影することや、『メメント』(2000)同様にカラーとモノクロで構造の変化を演出するなど、映像的な見どころも多い。IMAXカメラで撮影の本作『オッペンハイマー』は2023年7月21日米公開。日本公開情報が待たれる。