以前は、といっても相当前のことだから、詳しくは憶えていないけれど、
全体の印象として、音が浅く軽く聴こえ、従って演奏そのものもそういった
印象だった。
機器の変更で、著しく変わったのはDレンジの拡大で、この辺がアルトを
始め各楽器の表現の深さや明瞭さに関わってきたのだと思われる。
実は、ペッパーのレコードもそうなのだが、機器変更後に聴いたややこしい
フリー系の音楽がことごとくほぐれて解り易くなったことに気付いていた。
例えば、山下洋輔トリオのニューポートのライブとか、アイラーの音などが
音場の混沌から容易に抜け出して気安く話しかけてくるようだった。
ひょっとすると、これは機器の変更のせいだけでなく、こちらの聴き方の
聴き変化のせいとも勿論考えられるが、それだとある時期一斉にというのがちょっと
不自然に思えるし・・・。
どっちにしろ、ヴァンガードのペッパーがある日俄然上質な楽器を得て、上質な演奏を
し始めたのは事実だ。
しかし、よく考えて置かねばならないのは、かの名プロデューサーロイ・デュナンは
もともとこのレコードに素晴らしい音と演奏を刻んでいたということだ。
 このレコードからはまだ凄い演奏が聴けるのかも知れない。