このカンチガイオヤジは、非常に性格が悪い。

二十年くらい前、東京オペラシティコンサートホールのオープニングで
小澤がサイトウキネンを指揮してバッハのマタイ受難曲をやるという椿事があった。
サイトウキネンが松本でフェスティバルを始めてから、松本以外で始めて公演をやるということもあって
発表当初から大変話題になり、たった1公演のチケットをめぐる争奪戦は凄まじいものがあった。

なぜか一発で電話がつながり、無事チケットが取れたおいらは、
公演の少し前、小澤一味にマタイの講義をしているという、このオヤジと小さい会合で会った。
オヤジは自慢げに小澤一味にマタイのことを教えて「やっている」ことをべらべら話した後、
さらに周囲の連中を意地悪げに見回しながら「チケットは松本も東京も完全完売なんですよねー、残念でしたぁ」
とヘラヘラいやらしく笑った。おいらが「ああ、東京公演なら何とか取れましたよ。公演楽しみにしています」
と言うと、途端に表情を変えて「本当に取れたの?」「一般の人は買えるはずないんだけどなー、おかしーなー」
「なんでー?他に取れたっていう方、ひとりもいませんよー」「おかしいですねー」と不機嫌不規則発言を連発。
挙句の果てには「こういうものは普通の人が聴きにいらしても仕方がないでしょ」と吐き捨ててバックれた。
周囲はフリーズしていました。何が面白くなかったのか。