ビッグマンスペシャル 歴史クローズアップ 戦国群雄伝
天下人の資格を充分兼ね備えていた政宗
政宗の顔面がサッと変わった。語気が鋭くなった。
「心底読めた。何と浅ましいことを言われる。この政宗は一命をなげうって徳川に忠を
いたそうとしている。物惜しみなどせぬ。献上できる物なら、言われるまでもなく差し上げる。
ただし、たか藤四郎だけは、故豊太閤(秀吉)から遺愛品として特別に賜ったものである。
たとい、世が徳川に変わっても、武士の恩義を売って、追従に献上するわけにはいかぬ。
公方のご意向とあってもこれだけはまかりならぬ。伊達の家のある限り、子々孫々かなわぬ。
それが悪いとあらば、伊達の家を取り潰したらよかろう。」
大変な剣幕で奥の間に引っこんだまま、老中の相手もせず、老中たちが機嫌を取り結んで、
やっと局をおさめたとあるのである。
 主客全く転倒してしまっていることがわかる。幕閣を相手に、このような完全試合を
やってのけることができるとすれば、天下人の資格十分と言わねばならないのである。