LEC公認会計士試験 2009入門講座 財務会計論(簿記)A P.9-3-19より ;

「日本経済新聞社の調査によれば『退職給付に係る会計基準』の導入に伴う主要上場企業の会計基準変更時差異の金額は9兆7,800億円に及ぶといわれ、このうち半分は適用初年度に費用処理された。
償却年数については半数以上が即時費用化(一括償却)を選択する一方、会計基準の許容する上限である15年での処理を選ぶ会社もあり、対応が分かれた。

<会計基準変更時差異による費用処理額が1,000億円を超えた企業>
              (2001年3月期:適用初年度)
  1.富士通 4,100億円
  2.トヨタ自動車 3,732億円
  3.NTT 2,089億円
  4.三菱重工業 1,725億円
  5.日本通運 1,371億円
  6.三菱自動車工業 1,284億円
  7.住友電気工業 1,159億円

<会計基準変更時差異の処理年数>
  1年以内 53%
  2年〜5年 17%
  6年〜10年 13%
  11年〜14年 7%
  15年 10% 」

----つまり、富士通は退職金支払のための積立(正確には引当金)や年金資産の確保をろくに行っていなかった。
それは富士通だけではなく、意外にも優良企業とされる会社(というより経理や人事がしゃしゃり出ている会社?)にその傾向が強く、会計基準ができるとたちまちその処理に追われる事になった。
なかでも富士通は会社規模の割りに初年度の費用処理額が圧倒的に多く、ダントツだった。
国内全企業の累積額の、約1/25強が富士通の初年度処理額だった事になる。(4,100億円÷9兆7,800億円=0.041922…=4.2%=約1/25強)
2001年3月期はITバブルの真っ盛りだから初年度だけで処理できてしまった、と思いたいが、仮に15年償却の分が少しはあるとすると、ようやく今年あたりに秋草時代の負の遺産を消し去った(償却し終えた)事になる。(2001年3月期→2016年3月期)
こういう点の軽視・しわ寄せ傾向はそう変わらないと思うので、いまだにヒトも多い会社だし、本スレで退職金の安さが話題になっているけど労働基準法・会計基準ギリギリの低空飛行は今後も続くだろう。
技術者は貧しさには耐えられるというが、引退後は果たしてどうか。