同じ職場の先輩たちに、みんなちゃんと付けているのかを尋ねたところ、「ごまかしている」との答えがあった。
自分より仕事ができる先輩たちが時間通りに付けていないのに、新人の自分は付けられないと、考えたそうだ。

さらに、時間通り申告した先輩が、上司から「なんでだ」「ブラックもクソも関係あるか」と怒られているのを目撃したこともあったという。
「ちゃんと付けたら、自分もどやされると思って、嘘を書いていました」と男性は語った。

「記録を義務付けなければ、規制の意味がない」
男性の代理人・嶋崎量弁護士は、「こんなものは『自己申告』ではない」と力を込めて話した。

「みんな会社員として、自分の未来を考えています。申告した瞬間にどやされるなら、そう書けるわけがない」
「労働時間をきちんと把握する仕組みを、大企業の三菱電機が作れないわけがない。作らないんですよ」
「こういうことは、あきれるぐらい、そこら中で行われている。労働時間の上限規制をしたって、
インターバル制度を作ったって、肝心の記録がなければ、意味がありません」
上司「俺が死ねと言ったら死ぬのか」
男性は上司からパワハラも受けていたという。

男性は会議室に呼び出されて、何時間も叱責されていた。「お前の研究者生命を終わらせるのは、簡単なんだぞ」と言われたこともあった。
上司の指示に従って失敗した際には、「言われたことしかできないのか。じゃあお前は俺が死ねと言ったら死ぬのか」
などと詰め寄られたこともあったという。

書類を「これじゃダメだ」と突き返され、「お前、いつになったら書けるんだ」と言われながら、夜中の3時まで作らされた。
そして「こんなのは中学生でも書ける」とか「そんなんでよく博士取れたな」と罵倒された。
男性は国立大大学院の博士号を持っている。

14年4月に教育担当者がいなくなると、上司のパワハラは悪化した。男性は4月、病院でうつ病と診断され、薬を飲みながら仕事をしていた。
しかし、6月にドクターストップがかかり、休職することになったという。