俺の文章にもちょっと反省すべき点がある。
西野ギターは素直な音の良いギターで、おそらく良質な手工ギターを多くの愛好家の手に届けることをコンセプトにしている。石井ギターや松井ギターもだいたい同様。どの工房でも徒弟や共同製作者がいる。
桜井河野ギターはラミレス同様、いつでも取り替えのきく品質が平準化されたプロ用のステージギターの提供と、一般愛好家向けの中級モデルの生産を行っている。たくさんの徒弟がいる。
でも一人で全作業を行っている個人製作者は一つ一つの作業に集中しなから精魂込めて一本一本の楽器を製作している。細かいところは上記の楽器とは特徴がかなり違う。
例えば桜井河野のマエストロならば新品は爪楊枝の先ほどのキズもなく完璧な仕上がりだが、個人製作者の新品楽器はヘッドやバインディングに小さな打傷があったり裏板のセラックがムラムラになっていたりは当たり前。塗装については「どうせいずれは汚くなるのでその時は持って来てもらえれば綺麗にしますから」とか言われる。それが普通なのだ。そもそも見た目の完璧さを目指して作っていない。
おうどんへの批判の中に、「オーダー品を他人が弾いてキズつけたらどうする」みたいのが多くあったが、そもそも個人製作者の楽器がどういうものが分かっていない人の弁だろう。音がすべてであって見た目は二の次なのだ。それが本当の手工楽器なのかなと思う。アルカンヘルなんかは客がオーダー品に小さなキズを指摘しようものなら、「おまえにやる楽器はない。帰れ」と怒鳴って追い返すだろう。