我々はなぜくそじじいが荒らしに走ったのかという
疑問を解決するため、くそじいいの小屋がある京成線の駅に降り立った。
「まだ日本にこんなところがあったのか…」
思わず口に出てしまった言葉を同行した上司に失礼だと咎められた。
曲がりくねった狭い未舗装の道、路上で七輪で炊事をする主婦、
昼間から酒を飲んでいる失業者の群れ
洟をたらしたみすぼらしい身なりの子供
そして彼らは山の手言葉を話し身なりのいい我々を監視する様に見詰めている。
常時接続だの、ADSLだの、光ファイバーだので浮かれていた
我々は改めて下町の現状を噛み締めていた。
ボロ屑のような小屋に居たのは老いた妻一人
我々を見るなり全てを悟ったのか、涙ながらに
「主人が申し訳ありません」と我々に何度も土下座して詫びた。
我々はこの時初めてじじいの悪行の真相を知った。
下町の貧しさが全て悪かったのだ。
我々はじじいの妻から貰ったソース煎餅を手に、
打ちひしがれながら山の手へと帰路についた。

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「主人が申し訳ありません」