アンパンマンパッド

**名無しさん＠３周年** · 2012/01/06(金) 02:09:47.59

アンパンマンパッドについて語ろう！

http://catalog.bandai.co.jp/item/4543112701916000.html

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 01:59:59.17

さる人にして、いかで朝廷重くなれば徳川軽くなるの理見えずやあるべき。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:00:14.97

是に於て黄門の真意は甚だ疑ふべし。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:00:30.75

不平党に同意せし胸中穿鑿を要する所なり。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:00:46.51

時の将軍綱吉と黄門の不快なりしは、亦世に伝ふる所なり。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:01:02.15

得意なりしならんには、大日本史を編みしや否や、我れ識らず。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:01:17.90

美はしき表口上より、裏の辺見まほしくこそ。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:01:33.64

「家康の朝廷に対する精神は、敬して遠ざくるに在りしなり。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:01:49.37

信長秀吉等は皆朝廷を担ぎて事を図りしかど、家康にはさる事なし。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:02:05.13

関ヶ原大坂の軍にも、朝旨を受けて、王師皇軍などいふ体を装はず。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:02:20.75

武家と武家との戦と做して、朝廷の力を仮らず。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:02:36.55

是れ実に家康の深慮の存する所なり。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:02:52.30

徳川の末世に及びて、勤王を唱へし徒は、朝廷尊崇をもて東照宮の遺意なるが如く説きて、幕府を責めしかど、実を知らぬ者の迂説なりけり。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:03:08.03

朝廷に権力を持たせて、将軍政治の行はるると思ふは笑ふべし。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:03:23.80

流石に新井白石は此の間の消息を解せしが如し。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:03:39.54

家康また至て公卿風を嫌ひし男なりけり。」

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:03:55.34

しかし最も愉快だつたのは鮮かに著者自身の性格を示したやはり数行の感想である。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:04:11.09

「人三十にして老人にも少年にも交はるを得べし。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:04:26.83

「我れ酒を飲まざれど、人に酒を呑(原)せて語るは面白し。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:04:42.57

「始めて人を訪へば、知らぬ顔して室内の模様を見届け置くべし。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:04:58.33

爾後訪ふ毎に室内の変化に注目せよ。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:05:14.06

やがて主人の口には掩ひける性癖のをかしきふしを看出すべし。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:05:29.83

「人物を知らんには、其の人の金のつかひやうと、妻に対する振舞との二つこそ尤も見まほしけれ。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:05:45.58

若し世に細君の自ら筆を染めて、細かに良人が日常の振舞を書き取れる日記と、金銀出納帳とだにあらば、之れに優る伝記の材料はなかるべし。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:06:01.26

「世評に善くいはるる人も、実際はそれ程の大人物に非ず、悪くいはるる人も、亦それ程の悪人にあらず、古今皆然り。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:06:16.91

個人の貫目を量らんには、世評の封袋を除くことを忘るべからず。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:06:32.66

「智慧できて、気性の強くなりしものあり。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:06:48.31

「成る可く労力を節約して成るべく多く成功するの工夫を運らすべし。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:07:03.93

さりとて相場師に為れと言ふには非ず。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:07:19.69

但し人事なべて多少投機の性質を帯ぶるものと念ふべし。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:07:35.43

「愚人を相手に得々然たること能はざる政治家は、輿論政治の世に政治家たる資格なきものと知るべし。」

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:07:51.18

男女とも尻つ尾さへぶら下げてゐなければ、一人前の人間だと考へるのは三千年来の誤謬である。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:08:06.94

一人前の人間となる為には、まづ脳髄と称へられる灰白色の塊にも一人前の皺襞を具へなければならぬ。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:08:22.58

この大久保湖州と云ふ書生は確かに孔雀や猿を脱した一人前の脳髄を所有してゐる。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:08:38.24

いや、一人前所ではないかも知れない。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:08:54.43

彼の文章は冷然とした中に不思議にも情熱を漲らせてゐる。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:09:10.20

天下にかう云ふ文章ほど、一人前以上の脳髄の所在を歴々と教へる指道標はない。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:09:26.18

僕は皺くちやになつた五十銭札を出し、青黒いクロオスの表紙のついた「家康と直弼」を買ふことにした。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:09:41.96

買つた後に開いて見ると、巻頭には近衛公の題字を始め、重野成斎、坪内逍遥、島田沼南、徳富蘇峰、田口鼎軒等の序文だの、水谷不倒の「大久保湖州君小伝」だの、明治趣味の顋髯を生やした著者の写真だのもはひつてゐる。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:09:57.72

無名の書生だと思つた湖州は思ひの外知己に富んでゐたらしい。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:10:13.46

が、現代に生れた我々の湖州を知らぬことも亦事実である。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:10:29.29

すると諸名士の金玉の序文も「家康と直弼」を伝へることには失敗したと云はなければならぬ。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:10:45.04

これは読者たる僕の勇気を沮喪せしめるに足る発見である。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:11:00.67

才人だと思つた大久保湖州も或は大学の教授に多い、荘厳なる阿呆の一人だつたかも知れない。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:11:16.32

僕は夜長の電燈の下にかう云ふ疑惑を抱きながら、まづ彼の大作たる家康篇を読みはじめた。……

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:11:31.95

これはもう一昨年、――

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:11:47.64

念の為に書いて置けば、大正十一年の秋のことである。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:12:03.42

爾来僕は何かの機会にこの忘れられた歴史家を紹介したいと思ひながら、とうとう今日に及んでしまつた。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:12:19.07

紹介したいと云ふ以上、湖州大久保余所五郎の才人だつたことは云ふを待たない。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:12:34.80

いや、湖州は明治の生んだ、必しも多からざる才人中、最も特色のある一人である。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:12:50.46

諸君は勿論かう云ふ讃辞に懐疑的な微笑を浮べるであらう。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:13:06.21

諸君の確信する所によれば、古今の才人は一人残らず諸君の愛顧を辱うしてゐる。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:13:21.83

況や最も特色のある才人などと云ふものの等閑に附せられてゐる筈はない。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:13:37.58

それは諸君の云ふ通りである。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:13:53.32

第一古今の才人は何も才人だつた故に諸君の御意にかなつたのではない。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:14:09.08

諸君の御意にかなつた故に才人になることも出来たのである。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:14:24.82

つまり才人を才人にするのは才人自身といふよりも諸君であると云はなければならぬ。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:14:40.59

諸君はまことにその点だけは神よりも全智全能である。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:14:56.33

如何なる才人も諸君の為に門前払ひを食はされたが最後、露命さへ繋げぬのに違ひない。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:15:11.98

この故に尾形乾山は蕭条たる陋巷に窮死した。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:15:27.70

この故に亦大久保湖州も明治三十四年出版、正価一円二十銭の著書を、――

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:15:43.48

しかも彼の唯一の著書を「引ナシ五十銭」に売られてゐるのである。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:15:59.23

僕は湖州を才人だと云つた。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:16:14.86

が、諸君の微笑の前には少時この言葉を見合せても好い。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:16:30.62

その代りに僕は諸君の愛顧を辱うする光栄を得なかつた湖州の薄命を弔はなければならぬ。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:16:46.35

湖州もその後聞いた所によれば、少くとも識者の間には全然忘れられた次第ではない。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:17:02.06

しかし湖州の母校たる当年の早稲田専門学校――

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:17:17.80

現在の早稲田大学は片上伸の如き、本間久雄の如き、或は又宮島新三郎の如き、有為の批評家を世に出してゐる。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:17:33.55

けれども大久保湖州の名は未だ彼等の椽大の筆に一度たりと雖も上つたことはない。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:17:49.31

彼等は皆彼等の職に甚だ忠なる批評家である。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:18:05.04

或は聊か彼等の職に忠過ぎる憾みさへあるかも知れない。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:18:20.78

しかも湖州を逸してゐるのは怠慢の罪と云ふよりも、やはり我々と同じやうに無知の罪と云はなければならぬ。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:18:36.53

彼等は万里の波濤を隔てた仏蘭西、英吉利、露西亜等の群小作家の名をも心得てゐる。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:18:52.27

が、彼等の先輩たる大才の名だけは心得てゐない。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:19:08.01

かう云ふ湖州を薄命と呼ぶのは必ずしも誇張とは咎め難いであらう。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:19:23.76

且又湖州は早稲田大学の前に銅像か何か建てられたとしても、依然たる薄命の歴史家である。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:19:39.53

成程「家康と直弼」は彼の面目を伝へるかも知れない。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:19:55.18

しかし彼の畢生の事業は「井伊直弼伝」の大成である。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:20:10.82

彼はこの事業の為に三十六年の心血を瀝いだ。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:20:26.59

が、死は彼の命と共に「井伊直弼伝」をも奪ひ去つてしまつた。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:20:42.23

「こころざしなかばもとげぬ我身だにつひに行くべき道にゆきにけり」――

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:20:58.05

水谷不倒の湖州君小伝によれば、死に臨んだ彼は満腔の遺憾をかう云ふ一首に託したさうである。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:21:13.78

これをしも薄命と呼ばないとすれば、何ごとを薄命と呼ぶであらう?

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:21:29.56

僕は少くとも中道に仆れた先達の薄命を弔はなければならぬ。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:21:45.31

大久保湖州の作品は第一に「徳川家康篇」である。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:22:01.06

第二に「井伊直弼篇」である。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:22:16.82

第三に「遺老の実歴談に就きて」である。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:22:32.56

第三の「遺老の実歴談に就きて」は「明治維新の前後に際会して国事に与りし遺老の実歴談多く世に出づる」に当り、その史料的価値を考へた三十頁ばかりの論文に過ぎない。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:22:48.20

第二の「井伊直弼篇」も「井伊大老は開国論者に非ずといふに就いて」、「岡本黄石」、「長野主膳」の三篇の論文を寄せ集めた、たとへば「井伊直弼伝」と云ふ計画中の都市の一部分である。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:23:03.95

しかし第一の「徳川家康篇」だけは幸ひにも未成品に畢つてゐない。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:23:19.73

いや僕の信ずる所によれば、寧ろ前人を曠うした、戞々たる独造底の完成品である。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:23:35.48

一部の「徳川家康篇」は年少の家康を論じた「徳川家康」、中年の家康を論じた「鬼作左」、老年の家康を論じた「本多佐渡守」の三篇の論文から成り立つてゐる。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:23:51.63

(尤も湖州はかう云ふ順序に是等の論文を書いた訳ではない。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:24:07.23

「徳川家康」は明治三十一年、「鬼作左」は明治三十年、「本多佐渡守」は明治二十九年、――

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:24:22.87

即ち作品の順序とは全然反対に筆を執つたのである。)是等の論文は必しも金玉の名文と云ふ訳ではない。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:24:38.63

同時に又格別新しい史料に立脚してゐると云ふ次第でもない。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:24:54.45

しかし是等の論文の中から我々の目の前に浮んで来る征夷大将軍徳川家康は所謂歴史上の家康よりも数等に家康らしい家康である。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:25:10.20

たとへば「徳川家康」の中に女人に対する家康を論じた下の一節を読んで見るがよい。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:25:25.94

「家康の子、男女合はせて十六人、之れを生みし腹は十人、夫人の産みし二子を除きては、余は皆側妾の所出なり。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:25:41.57

(中略)其の最後にお勝が腹に末女を挙げさせしは、既に将軍職を伜に渡して、駿府に隠居せし身にて、老いても壮なる六十六歳の時なりとぞ識られける。

**名無しさん＠３周年** · 2018/03/07(水) 02:25:57.20

其の他この豪傑が戯に手折られながら、子を結ばで空しく散りにし花は亦一二に止まらざるべし。