むかしむかし、雪と森に囲まれて外界から孤立した小さな国があった。
その国には世界中でただ一人生き残った魔女がいて、全ての国民はこの魔女により生まれたその日に寿命を定められる。
(人口がパンクしないように、生きる場所を失った人が新しい土地を求めないように、ひいては余所の人間を国に入れない為に魔女が定めた掟)


それは国王夫妻がやっと授かった子宝も例外ではなく、生まれた姫が与えられた寿命はたったの十四年。
后は嘆き悲しみ、王は悩み果てた。
考え抜いた末に「姫」として与えられた運命を覆すべく、王は姫を王子として育てることを決める。

やがて姫は自らの性や運命を知らぬまま、涼やかな少年のように美しく成長した。


そして運命の夜。
姫を迎えにきた魔女へ王はこう言い放つ。
「十四年で死ぬべき姫などここにはいない。愛べき我が子はこの王子ただ一人だ。」