月刊WiLL 2023年3月号
岸田増税
■本田悦朗
アベノミクス仕掛人「天下の愚策」と断言
ttps://www.web-wac.co.jp/magazine/will/2023%e5%b9%b43%e6%9c%88%e5%8f%b7
 私をはじめとするアベノミクス支持派は口を揃えて、「増税、とりわけ消費増税は絶対にやめてください」と安倍元総理に申し
上げました。安倍元総理も増税の危険性を知っていたはずです。しかし、民主党政権下のいわゆる「三党合意」により消費増税
は法制化されている。一度決まった法律をひっくり返すのは至難の業でした。

 その後、さらなる消費増税 (八%→一〇%)は二度延期されましたが、最終的に二〇一九年十月に実施。安倍元総理でなければ、
延期すら難しかったはずです。そして案の定、増税により再び消費は落ちてしまいました。

 財務省内で最も力を持っているのが主計局です。彼らの仕事は、各省庁から提出された予算案を査定すること。財務省内では
「コストカッター」 が評価されるので、各省庁が要求する予算をいかに削るかしか考えていない。日本の国民経済全体をマクロ的
に眺める視点がありません。財務省の典型的な出世ルートは主税局長→主計局長→事務次官。こうした出世コースに乗るため
には、増税もしくは歳出カットが重要となります。
 財政出動で需要を喚起して経済のパイを大きくすれば、増税に頼ることなく自然に税収は上がっていきます。ところが、財務省
にはそういった発想がありません。景気回復で税収が増えても、財務省内の評価にはつながらない。 その一方で、財政再建を
掲げて増税や歳出カットを実現すれば、業績が認められて出世できます。

 財務官僚は「入るを量りて出ずるを制す」ことしか考えていません。収入がどれくらいあるかを計算してから、それに釣り合った
支出計画を立てる。足りない分は国債で補いますが、それは例外にすぎない。歳出はすべて税収で賄うという古い発想にとらわ
れているのです。通貨についての研究は進み、財政・金融をめぐる最先端の議論がアメリカを中心に行われている。日本の内外
で行われている学者の最先端の議論は、「日本にはまだまだ財政余力がある」というものです。にもかかわらず、財務省だけは
明治の発想にとらわれたまま。世界の潮流に完全に乗り遅れています。
(続く)